便が漏れてる? 〜下着の汚れ〜
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(2019/06/27加筆修正)
最近、おしりではなく顔のシワやシミが気になる佐々木みのりです。
「便漏れ」というと、高齢になって肛門のしまりがゆるくなり、そのせいで便が漏れたり下着が汚れたりするもの・・・
という認識の人が多いと思います。
間違ってないです。
確かにそういうケースも多いです。
明らかに肛門のしまりが悪くなり便が漏れる状態を「便失禁」と言います。
この便失禁、加齢による括約筋の筋力低下だけでなく、分娩時の会陰裂傷によっても起こることがあります。
本当の便失禁については直腸肛門機能を専門にする医師を紹介しています。
私たちが扱うのは本当の便失禁ではなく、ニセ便失禁です。
ここでは「ニセ便失禁」について解説したいと思います。
ニセ便失禁とは?
肛門のしまりも悪くない、肛門に異常はないのに、便漏れと似たような症状がある場合、私たちはこれを「ニセ便失禁」と呼んでいます。
医学用語ではありません。
出残り便秘や鈍感便秘と同様、私たちが患者さんに分かりやすく説明するために作った造語です。
本当の便失禁と同じような症状なので、患者さん本人は「絶対に肛門のしまりが悪いんだ・・・。そうに違いない。」と強く確信して受診されることが多いです。
特に20代の若い女性だと絶望的な顔をされて半泣きで診察室に入ってこられることもあります。
意外なことに若い女性にも結構みられます。
だから悩みも深刻です。
便漏れの程度も
「紙で拭くたびに便が付く」
という軽いものから
「下着に少量の便が付く」
「下着が便で汚れるからナプキンを当てている」
「オナラをすると便が出る」
「何度拭いても肛門の周りが便まみれなのでオムツを当てている」
というものまで様々です。
便の臭いを気にされる女性も多く、そのせいで人との付き合いを遠ざけているケースもあり、人生に暗い影を落とします。
命に関わることではないけれど「死にたいと思った」と打ち明けられた患者さんもおられます。。。
診察すると確かに下着に便も付いているし、肛門周囲にも便が付いています。
さっきトイレで排便をすませ、きれいにウォシュレットで洗ってきたのに・・・です。
そして便が付いているのは下着と肛門周囲だけではありません。
肛門の中も便まみれなんです。
指診をすると肛門や直腸に便が残っています。
だからキレイに拭き取れないのです。
何度拭いても便が付くのです。
そして洗ってキレイにしたくなる。
だから温水便座愛用者が多い。
キレイにしようと思って温水便座で洗うと、実は、かえって便で下着が汚れやすくなるんですよ。
温水が肛門内に入ると、便と混じって便汁となり、かえって漏れ出て来やすい状態になります。
洗うのをやめたほうが汚れにくくなった・・・
と言われた患者さんも多いです。
肛門括約筋の筋力低下や括約筋の断裂によって引き起こされる本当の便失禁ではないのに、まるで本当の便失禁であるかのような症状を引き起こすので「ニセ便失禁」と名付けました。
ニセ便失禁の背景には便通異常がある
というわけでして、本当の便失禁と違ってニセ便失禁は便通異常によるものです。
以下の3つが多いです。
1.出残り便秘
「便秘」とは読んで字のごとく「便を秘めること」。
毎日便が出ていてもスッキリ出ずに中に便が残っていたら便秘と考え「出残り便秘」と定義づけています。
残った便があとからチョロチョロ出てくることも多く、1日に何度も便が出たり、食べる度に便が出るという症状の患者さんも多いです。
1日に何度も便が出るから快便だと勘違いしている患者さんも多いですね。
2.鈍感便秘
肛門に便が溜まっているのに便意がない、あるいは弱い便意しかなく、いきんでも出せないという状態の便秘です。
肛門の感覚が鈍っているので「鈍感便秘」と名前を付けました。
出残り便秘と合併しているケースも多いです。
何日も便を出さずに溜めこむと、便の水分が無くなって硬くなり、それが肛門で詰まってしまって糞詰まりになると「便栓塞」と言いますが、あまりにも大量の便が詰まって溜まると、便があふれ出てくることがあります。
それを便漏れだと勘違いして受診されるケースも多いです。
糞詰まりと便漏れはセットで生じることも多く、今までにもオムツを当てて受診された患者さんもおられました。
便は急に詰まりませんから早めに対処することが大切です。
こちらの話も是非読んで下さい。
信じられないようなことが肛門科では起こっています↓
3,下剤の乱用
市販薬や医師から処方される下剤だけでなく、「スッキリ出る」「モリモリ出る」「モリモリ出てスリムになる」「ハーブの力で便通改善!」などと謳っている健康食品やお茶なども含みます。
市販薬の多くに含まれている「センナ」や「アロエ」。
「ハーブ」の力で・・・などと体に優しいを謳っている健康食品の中にも実は結構入っていますよ。
「センナ」とは記載されていませんが、以下のようなものが記載されていたら同じく大腸刺激性下剤です↓
- キャンドルブッシュ
- ゴールデンキャンドル
- カッシアアラタ
- カスカラ・サグラダ
- ダイオウ
飲めば必ず効くようになっていますが(でないと売れないですよね)、依存性・習慣性があり、長期服用により大腸メラノーシスを引き起こします。
腸の中が真っ黒になってしまうんです。
黒くなった腸は自分で動かなくなるので、最終的には下剤を飲まないと便が出ない体になってしまいます。
毎日飲むと4ヶ月で、時々飲んでるだけでも9ヶ月あれば腸は黒くなります。
だから出来るだけ避けたい成分。
何を飲んでも効かない頑固な便秘にのみ考えるべき成分ですね。
詳しい話はコチラ↓↓
また医師から処方されることの多い酸化マグネシウム系の薬も飲み過ぎると下痢になります。
マグミット、マグラックスなどの錠剤も同じです。
これらの下剤で下痢になっていたり、下剤が効きすぎて何度もトイレに行っている人が本当に多いです。
急な便意が来て便がゆるいとトイレに間に合わなかったり、ちょっと漏れ出てしまうのです。
適切な量で調節して飲めばいいのですが、その調節の仕方が分からない、難しいと言われる患者さんも多いです。
また「出口の便秘」なのに「おなか(腸)に効く」下剤を飲むと、おなか(腸)が過剰に動くことになり下痢になります。
どっちのタイプの便秘なのか?
便が停滞しているのは「おなか(腸)」なのか、「おしり(肛門)」なのか?
どっちに停滞しているかで治療が違ってくるため、下剤を飲む前に出口のチェックをしてほしいものですね。
肛門科に来られる患者さんのほとんどは腸は正常に動いている人が多いです。
腸が正常に動いているのに、腸に効く下剤を飲むから下痢になったり、何度も出たりするんです。
必要のない下剤を飲んでいる人が本当に多いです。
今一度、本当にその下剤が必要なのか、考えてみて下さいね。
恥ずかしがらずに受診を
痔でもないし、こんな病気でもないことを、どこに相談して、どこを受診したらいいのか分からない・・・
そう思って長年、悩んでいる人が多いです。
肛門科を受診してみてください。
「肛門科」って看板に書いてある所じゃないですよ。
肛門を専門にしている先生にかかって欲しいのです。
専門の先生の探す時にコチラの記事を参考にしてみて下さい↓
さらに突っ込んで全国の肛門専門施設を実名で書きました。
この記事を読んでから肛門科を選んで欲しい↓
きっと、あなたの近くにも肛門専門の先生がいるはずです。
良い先生に出会えることを願っています。
コチラの記事も是非参考にしてください↓
元皮膚科医という異色の経歴を持つ肛門科専門医。現在でも肛門科専門医の資格を持つ女性医師は20名余り。その中で指導医の資格まで持ち、第一線で手術まで担当する女医は10名足らず。元皮膚科医という異色の経歴を持つため、肛門周囲の皮膚疾患の治療も得意とし、肛門外科の医師を対象に肛門周囲の皮膚病変についての学会での講演も多数あり。
「痔=手術」という肛門医療業界において、痔の原因となった「肛門の便秘」を直すことによって「切らない痔治療」を実現。自由診療にもかかわらず日本全国や海外からも患者が訪れている。大阪肛門科診療所(旧大阪肛門病院)は明治45年創立の日本で2番目に古い肛門科専門施設でもあり日本大腸肛門病学会認定施設。初代院長の佐々木惟朝は同学会の設立者の一人である。
2017年10月には日本臨床内科医学会において教育講演を行うなど新しい便秘の概念を提唱。